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始まり。
ss。
エスティールと名乗った妙齢の女性に連れられたオレは育った街を離れ、馬車に乗せられた。(護衛が両側についていて窮屈この上無かった。)
どのくらい揺られていただろう。気付けば馬車は止まっていた。
「降りなさい」
返事もせずに馬車から降りて目の前の大きな建物を見上げる。第一印象は、真っ白だったということだ。今日は赤色を見過ぎていた為か、目が痛い。
「とりあえず、今日は貴方の部屋でゆっくりすると良いわ。本格的に始まるのは明日からだから」
オレにはよく分からない事を言いながら建物に入る。建物の前にも槍を持った男が2人立っていたが、エスティールを見ると場所を開けた。
「ついてきなさい」
オレはとりあえず彼女に従い、建物へと足を踏み入れた。
中は明るかった。光が、という意味では無く、人の笑顔があふれている。オレと擦れ違う子供、くだらない会話をしている男、窓際に座っている老婆。
誰もが、穏やかな光をその瞳に宿している。
オレは、その光を知らない。オレに今まで向けられた瞳はどんな光を湛えていただろう。
侮蔑。嫉妬。あるいは、羨望。
オレが、あの城の青年に弟として迎えられたその日から。周りから向けられてきた視線は決して好ましい物では無かった。
もう、どうでもいいことだけど。
「此処よ」
エスティールは一本の廊下の突き当たりにあったドアの前に立ち、その扉を開けた。
「―――」
白い部屋だった。窓は開け放たれ、白いレースのカーテンが揺れている。
そして、窓の傍にあるベッドに一人の少女が座っていた。
銀色の長い髪が風に揺れていた。こちらに気付いた彼女が、窓の外からオレへと視線を向ける。
「・・・・・・・・・彼?」
「えぇ」
エスティールと少女は短く言葉を交わす。
「紹介するわ、シン。」
少女は微笑んだ。
「彼女が、貴方のマスターとなる少女。」
「名前は――リア」
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