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エスティール
ss。
「王と忌み子を殺せ!」
僕の家に踏みこんできた男達は、手に武器を持ってそう叫んだ。
「逃げろ、逃げるんだ!」
兄さんはそう叫んだ。
逃げられる筈は無かった。僕は囲まれていた。
「忌み子だ」
「殺せ」
「見ろ、あの赤い瞳を・・・」
「やはり忌み子を匿っていたんだ」
「殺せ」
彼らは棍棒や剣を振り下ろした。
何度も、何度も。
彼らは僕を罵り続けた。
忌み子、生きている価値が無い、魔物。
誰からも愛されない子供。
そう言っていた気がする。
僕の心に亀裂が入る。
僕が死んでいく。
彼らは、笑みを浮かべていた。
僕は、死んだ。
真っ暗な視界に、赤い光が灯った。
「キサマニ、チカラヲ」
酷くノイズが混じった声は語りかけてくる。
「カタキヲトリタクハナイカ?」
兄さんの頭が転がっている。
口からは血が流れ、黒い瞳はもう、何も見てはいない。
「オレノ テ ヲ トレ」
僕の身体はもう動かない。
「キサマニ、チカラヲ」
だけどこいつの力があれば、僕を殺そうとする奴を殺せる。直感がそう告げていた。
「サズケヨウ」
だからオレは、その手を取った。
………
……
…
「貴方ならそのデモンと契約できると思っていたわ」
酷く疲れた身体でゆっくりと振り返った先、赤い路地の上で、白い女性はそう微笑んだ。
血なまぐさいこの場所に、到底似つかわしくない人だった。
「さぁ、帰りましょう」
何処へ?
「もう貴方が誰かに傷つけられることが無い所へ」
恐くない?
「勿論」
オレは、白い女性へ向かって歩を進めた。途中、兄の亡骸の一部を踏んだ気がした。
歩くたびに、粘着質な音がして気持ち悪い。
「歓迎するわ」
女性はオレの頬に手を添え、血を拭い、言う。
「私は、エスティール。よろしくね、シン」
彼女、エスティールは微笑んだ。
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