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ラッドシティの戦い アフター
「――」には任意の名前を当ててください。
………
………
ラッドシティは平和になった。棘を代償とし街中に生えた紫の木。それになる実は幾らもいでも無くならず、それは美味で食べると不満を解消してくれる。
これによって、飢えも不満も怒りも全て無くなる。
「…だけど」
手に取った紫の実に口を付ける事も無く地に落とし、シンはぽつりと言葉を漏らした。
「本当に、これで良かったのかな」
空を見上げて呟く。そこに、もう紫煙は無い。
「……これは確かに、平和と言えば平和だよ。誰もが笑顔になれる…かもしれない。だけど、努力せずに突然降ってきた「幸せ」を享受し、生きていく。それってさ」
言葉を切り、シンは――を見た。
「生きてる、って言うのかな?」
「シェラハなんかは論外だったさ。だけどゼファー達は、この街を救いたかったんだ。方法は、決して正しくなんてなかったけど…少なくとも、こんな未来を望んでいなかった…と思う」
――から視線を外し、シンは再び空を見上げる。
「もし、彼女らが今、普通の人として生きていたのなら…」
――は言葉を紡ぐ。シンは視線を落とした。
「…そうだな。もしもの話をしても仕方ないな。だけど。」
思うんだ、とシンは言葉を続けた。
「俺の中にいるもう一人の俺が言うんだ。もっと何か出来たんじゃないかって。彼らを本当の意味で笑顔にさせる方法が何処かにあったんじゃないかって。だけど、こうも言うんだ。彼らの未来を守るにはこれしか無かったって。出来る事は全てしたんだって」
自虐的な笑みを浮かべる。
「この街の人の笑顔が守りたかったのに、今のラッドシティの人達の笑顔を見て……何かを間違ってしまったんじゃないかって思ってる」
暫しの沈黙。それを破ったのはシンだった。宿へと足を向ける。
「……ごめん、変な話につき合わせた。またな」
――は彼の背中へ言葉を投げた。
「………。」
シンは応えずに振り返ると、ぎこちなく笑った。
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