笑顔と青空と。

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「…は……？」
オレの第一声。いや、多分この状況に置かれた人は大体こう言うんじゃないか。
この一日で突然連れて来られて、馬車で揺られて、初対面の女の子を紹介されて「マスターとなる少女」とか言われてそうなんだ、と納得できるわけが無い。
つーか、マスターって何？ご主人様？
「……エスティール…彼、混乱してる…」
「…そういえば説明してなかったわ」
疑問符を浮かべる俺をよそにエスティールは椅子に腰かけた。おい、オレの椅子は？
「まず最初に説明するべきだったわ。よく聞いて」
「貴方は、普通の人間とはちょっと違うの」
あの忌み子とかの事か？と鼻で笑いそうになる。しかし、彼女の表情が至って真面目だった為それは止めておいた。
「貴方は、あの街で忌み子と呼ばれていた…それには、理由があるのよ。自業自得、といって良いかもしれないけど」
「……何だと？」
思わず低い声が出る。今まで散々人に嘲笑されて、蔑まれて、挙句の果てには殺されかけたってのに、自業自得？
「……冗談じゃねぇ……アンタに何が分かる！？目の前で大切な人殺されて、抑え込まれて、殴られて、蹴られて！」
口から出た言葉は止まらなかった。視界の端で、少女が身を縮めるのが見えた。
「殺されかけて！気付いたら人を殺してて！…もう嫌なんだよ！何で、何でオレばっかりこんな目に！」
ぱしん、と乾いた音がした。いつのまにか椅子から立ちあがっていたエスティールに頬を張られたと気づくのに数秒かかった。
「いい加減にしなさい。……貴方は、人の死を視たわね？」
「……人の、死……？」
「貴方は、瞳を覗き込むことで……『終焉』を視る事が出来るわね？」
「……ぁ……」
何故それを、と言おうとした。けど、言葉に出来ずに息が漏れた。
「知っているわ。貴方が通りすがる人に「死んでしまうから気を付けて」と触れ回っていた事も。」
そして、とエスティールは言葉を続けた。
「貴方が死ぬと告げた人は皆……それから間もない内に死んでいた事も」
「……偶然だ」
「偶然じゃないわ。隠さなくても良い……私達は、その力を知っているから」
息を呑んだ。今、こいつは何と言った？
「知っている？…なら、教えろ！これは何だ！？何でこんな物が視える！？」
エスティールは再び椅子に腰かけた。
「……理由は簡単よ。貴方が、…『エンドブレイカー』と呼ばれる存在だから」
「エンド、ブレイカー…？」
「終焉を破壊する者……それがエンドブレイカー。そして、此処はエンドブレイカーとして覚醒したもののその力が災いして虐げられている者を保護する場所」
「…アンタが言う事が本当なら、そいつも？」
そう言ってリアに視線を向ける。さっきので怯えているのか、恐る恐るといった視線を返された。
「えぇ。彼女も、そして私も」
「……アンタも？」
エスティールは一瞬だけ目を閉じ、窓の外へ視線を向けた。
「此処の皆がエンドブレイカーというわけでは無いわ。でも、半分くらいはそうよ」
それで、と彼女は再びオレに視線を向けた。
「本題だけど。貴方はいつからその力を持ったか憶えてる？」
「…憶えてない。だけど、あの城に住むようになってからは視えてた…と思う」
「…そう……まぁ、良いわ。貴方は今後、リアと一緒に行動しなさい」
「そうだ、さっきのマスターって何だ？」
「後々、分かるはずよ。…とりあえず今日はもう休みなさい」
そう言ってエスティールは椅子を立つ。
「ちょっと、まだ聞いてない事が！」
引きとめようとするが、エスティールは部屋を出て行ってしまった。





「彼がエンドブレイカーの力を持っていた……ならやはり、あの青年は……」
部屋を後にしたエスティールは、一人そう呟いた。